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微分とは何か(一次近似)

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微分とは何かについて、全くわからないと言う人だけでなく、計算はある程度できるがいまいちしっくり来てない人もいるかもしれません

そんな人にとってこの記事は有益でありましょう

逆に、当たり前のように思っている高校生もたくさんいると思います

そんな人でも、微分とは何かについて、以下のように複数の説明の仕方を知っておくのは有益だと思います

いろんな説明をするので、微分が今全くわからない人でも自分にとってわかりやすい説明があると思います

また、物理を勉強する人は物理学において大変重要な概念である一次近似との関連を理解しておくことが大切です 物理で受験する方は③、④の考え方をできるだけ理解してください

また、厳密な定義だけでなくときに感覚的な理解も大切にしてほしいと思います

感覚的な理解は、それだけでは不十分ですが、使いこなす上で強力な武器になります

 

まず大前提として、微分は関数に対して定義されるものです

関数とは何かについてはこちら↓

vasewell.hatenablog.com

以下、考える関数をfとします

①教科書的定義

まず、教科書的な定義を確認します

微分係数とは→導関数とは→微分とは という展開です

微分係数の定義

関数fのx=aにおける微分係数は、f’(a)と書き、

\displaystyle \lim_{h\to0}\frac{f(a+h)-f(a)}{h}

である

と定義します

この式の説明をします まずlimの中身だけに注目してください

これは下の図で説明できます

f:id:vasewell:20200227222119j:plain

グラフと赤い直線の交点は(a,f(a))(a+h,f(a+h))ここから赤い直線の傾きがlimの中身だとわかる

この図の赤い直線の傾きがlimの中身であることを確認してください

この図のhを0にギリギリまで近づけたときの赤い直線の傾きがこの式の値です

導関数の定義

微分係数によって、関数からその導関数という新しい関数を定義することができます

具体的には、任意の数aに対し、関数fのx=aにおける微分係数を出す関数を、関数fの導関数f'と定義します

つまり、\displaystyle f'(a)=\lim_{h\to0}\frac{f(a+h)-f(a)}{h}

です。

微分とは? 

微分とは以下のように定義できます

関数fから導関数f’を求めることをfを微分するという」

②接線の傾き(直感的説明)

次に、教科書的な説明では腑に落ちない人向けの説明です 

グラフy=f(x)の曲線の形の針金を想像してください

その針金のx=aの点(a,f(a))のところに定規をあてます

すると、その定規が接線となります

f:id:vasewell:20200227222539j:plain

灰色の曲線がグラフであり針金、黄色い直線が定規であり接線  接点は(a,f(a))

この接線の傾きを、fのx=aにおける微分係数と定義します

あとは①と同様に、任意の数aに対し、関数fのx=aにおける微分係数を出す関数を、関数fの導関数f'と定義します

つまり、f'(a)は、y=f(x)のx=aにおける接線の傾きである、ということになります

そして、「関数fを微分する」ということの意味は「関数fから導関数f’を求めること」です

 

③直線近似

「定規を当てる」というやりかたとは別の理解の仕方です

グラフy=f(x)の一点(a,f(a))付近に注目します

そこを無限に拡大すると直線に見えてくるので、この直線の傾きをf’(a)とします

 ↓たとえばこんな感じで拡大する

f:id:vasewell:20200227222132j:plain

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↑ここまでくると直線と見分けがつかなくなりますよね

実は、これがy=f(x)のx=aにおける接線となるのです

あとは②と同様に微分を定義できます

f’(a)がこの直線(接線)の傾きとなります

f’(a)のことをx=aにおけるfの微分係数といい、f’をfの導関数という

fからf’を求めることをfを微分するという

④一次近似(③と本質的に同じ)

グラフy=f(x)の一点(x,f(x))付近に注目します

xから微小なdxだけグラフ上でずれることを考えます(xからx+dxにずれる)

このとき、f(x)もf(x+dx)に変化します

つまり、点P(x,f(x))からP'(x+dx,f(x+dx))に変化します

この時,y座標の変化はf(x+dx)-f(x)なので(これをdf(x)と表す) そして

df(x)=f(x+dx)-f(x)

を考えます この変化df(x)も微小です

dx=0の時、変化しないということなので、df(x)=0

よってdf(x)=dx*(xとdxの関数)

と考えられます

 (xとdxの関数)の部分の、xを定数、dxを変数と見たときの定数項(xのみに依存する項)をf’(x)とします 定数項以外は、dxが微小なので無視します(*)

すると

  df(x)=f'(x)dx

とかけます つまり、df(x)がdxの一次式になる (一次近似)

だから、この一次式の係数微分係数f’(x)という

実は、

 df(x)=f'(x)dx

を整理して

 \frac{df(x)}{dx}=f'(x)

と書いたのがライプニッツの記法だったのです

この観点からは、微分とは一次近似の係数を求めることだ、といえるでしょう

ちなみに もし(*)のところで定数項だけでなくdxの一次の項まで取ると

 df(x)=f'(x)dx+?*dx^2

と二次の近似になってしまいます。df(x)とdxは微小ですが、dx^2は微小の微小なのでdxやdf(x)と比較してもさらに微小なので無視できるという考え方になります。

一次近似というのが、③で言う所のグラフを直線と見做すことに相当します(直線は一次関数ですよね)

注意点は、近似という名前がついていますが、計算するごとに違った値になるというような、実験誤差のような誤差があるわけではないということです

また、どの考え方で計算しても同じ計算結果となります

ja.wikipedia.org

ちなみにウィキペディアのこの記事はよくできており、おすすめです。

(ですが、微分が全くわからないと言う方には不向きかもしれません)

次回、これらの考え方が結局同じものであるということや微分の公式の導出、具体的な計算方法をやります