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換算質量とは?【二体問題】【相対運動方程式】【相対運動エネルギー】【力学】

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換算質量という言葉を聞いたことがありますか?

換算質量は、力学の二体問題で計算を単純化するために使える概念です

二体問題は東大など難関大学の物理で頻出ですので、しっかり抑えていきましょう

私も、この概念をどう使えばいいか混乱したことがあります

しかし、意外とネットを探しても解説が少ないんですね...

そこでここで一度まとめてみようと思ったわけです

まず、換算質量の定義と、換算質量を利用した公式を確認し、証明したのち、例題でどのように使えるかを理解してください。

まずは、公式のまとめ

換算質量μとは、二つの物体の系Sを考えるときに使う。具体的には、二つの物体の質量がm,Mであるとき(物体m,Mとする)、換算質量は

\mu=\frac{mM}{m+M}

と定義される。これは質量の次元を持つ。このとき、

重心系における全運動エネルギー=\frac{1}{2}{\mu}v_r^2(相対運動エネルギーという)

ただし、v_rは、mとMの相対速度の大きさである

外力が加わらない場合、つまりmとM同士及ぼし合っている力のみ存在するとき、

内力の仕事の合計(重心系かどうかによらずどんな系でも等しい!)

\frac{1}{2}{\mu}v_r^2(相対運動エネルギー)の変化

=重心系全運動エネルギーの変化

さらに、mがMからうける力を\vec{F_m}、Mからみたmの相対速度を\vec{v_r}とすると、

\vec{F_m}=\mu\frac{d\vec{v_r}}{dt}

という「運動方程式」が成立する。(相対運動方程式

 

 

覚えやすくするために、さらに要約すると、

mとMの二体問題において

\mu=\frac{mM}{m+M}(換算質量)

重心系における全運動エネルギー=\frac{1}{2}{\mu}v_r^2(相対運動エネルギー)

特に、外力がない場合

内力の仕事=\frac{1}{2}{\mu}v_r^2(相対運動エネルギー)の変化=重心系全運動エネルギーの変化

\vec{F_m}=\mu\frac{d\vec{v_r}}{dt}(相対運動方程式

以下、証明です

まず、

重心系における全運動エネルギー=\frac{1}{2}{\mu}v_r^2

を示す

重心系において、m,Mの速度をそれぞれ\vec{v},\vec{V}とすると重心系における全運動量がゼロであることより、

m\vec{v}+M\vec{V}=0...①

f:id:vasewell:20210213182541j:plain

そこで、\vec{v},\vec{V}の大きさをそれぞれv,Vとおくと

mv=MV

である。そこで運動量の大きさpを

mv=MV=p

とおいておこう。すると、重心系における全運動エネルギーは

K_G\\=\frac{1}{2}mv^2+\frac{1}{2}MV^2\\=\frac{1}{2}pv+\frac{1}{2}pV\\=\frac{1}{2}p(v+V)\\=\frac{1}{2}p\frac{m+M}{m+M}(v+V)\\=\frac{1}{2}\frac{mp+Mp}{m+M}(v+V)\\=\frac{1}{2}\frac{mMV+Mmv}{m+M}(v+V)\\=\frac{1}{2}\frac{mM}{m+M}(v+V)^2\\=\frac{1}{2}{\mu}v_r^2(相対運動エネルギー)...②

最後の行で、v+V=v_rを用いた。v_rは、相対速度の大きさなので、\vec{v}-\vec{V}の大きさであるが、①より、\vec{v}\vec{V}は逆向きだから符号が逆なのでv_r=v+Vでよい。

 

次に外力が加わらない場合の

内力の仕事=\frac{1}{2}{\mu}v_r^2(相対運動エネルギー)の変化=重心系全運動エネルギー(K_G)の変化

を示す

まず、内力の仕事の合計は重心系からみてもとそうでない系からみても一定である*1ことを示す

mがMからうける力を\vec{F_m},Mがmからうける力を\vec{F_M}とおくと作用反作用の法則より\vec{F_M}=-\vec{F_m}

ゆえにこれら二つがする合計の仕事率Wは、

W=\vec{F_m}・\vec{v}+\vec{F_M}・\vec{V}=\vec{F_m}・(\vec{v}-\vec{V})=\vec{F_m}・\vec{v_r}

となり、右辺は重心系であろうとそうでなかろうと不変である。...※

ところで、②より、

K_G=\frac{1}{2}{\mu}v_r^2

なので重心系においてエネルギーと仕事の関係*2より

内力の全仕事=K_Gの変化=\frac{1}{2}{\mu}v_r^2の変化

である

※ より、左辺の「内力の仕事」は、重心系でなくともよい

 

 

最後に、

\vec{F_m}={\mu}\frac{d\vec{v_r}}{dt}(相対運動方程式

を示す

mとMの運動方程式は作用反作用の法則\vec{F_M}=-\vec{F_m}より

\frac{\vec{F_m}}{m}=\frac{d\vec{v}}{dt}

-\frac{\vec{F_m}}{M}=\frac{d\vec{V}}{dt}

両辺を引くと、

(\frac{1}{m}+\frac{1}{M})\vec{F_m}=\frac{d}{dt}(\vec{v}-\vec{V})=\frac{d}{dt}\vec{v_r}

左辺の部分は

\frac{1}{m}+\frac{1}{M}=\frac{1}{\mu}

なので、

\vec{F_m}=\mu\frac{d\vec{v_r}}{dt}

である

f:id:vasewell:20210213182543j:plain

 

*1:一般論としてそうだが二体問題の場合のケースをここで証明しておこう。一般論の証明はここ

*2:外力0なので、重心は等速度運動し、重心系は慣性系なので慣性力は0である。だから慣性力の仕事は入らない。ただし、外力がある場合で、重心系で慣性力があったとしても重心系で慣性力は仕事をしない