大学入試徹底攻略

東大生が幅広く高校物理、高校数学の解説をします

メニューページへ

ガリレイの相対性原理の注意点【思わぬ落とし穴】【力学】【電磁気】

←電磁気のメニュー

電磁気の分野で実験室系とは異なる慣性系を勝手にとってはならないというこ話をこれからしよう

 

まずガリレイの相対性原理という原理が力学においては存在する。これは運動方程式がどんな慣性系でも変化しないという原理だ

そこから、力は慣性系によらず不変であるということが導ける

vasewell.hatenablog.com

だが、この原理はローレンツ力が速度に依存していること

\vec{F}=q(\vec{E}+\vec{v}×\vec{B})...①

と明らかに矛盾しているように見える

 

電磁気学の理論が生まれた当初、この矛盾はエーテルという概念によって説明されていた。それは以下のような考え方だった。

空間にはエーテルという物質で満たされており、エーテルこそが電場や磁場の実態である

①式はエーテルの静止系、つまりエーテルと共に動く座標系でのみ成り立つ

エーテルの静止系でない場合は、エーテルの速度を\vec{V}として

\vec{F}=q(\vec{E}+(\vec{v}-\vec{V})×\vec{B})...②

これこそが本当に一般的な式である。(\vec{v}-\vec{V})は確かに相対速度だから慣性系が変わっても不変だ。この式ならガリレイの相対性原理を満たす!

 

そう考えられていたのだが、実はエーテルは存在しないことが証明されてしまった。

この問題を解決した者こそ、かの有名なアインシュタイン相対性理論である。

 

さて、高校物理の範囲内においても力学と電磁気学の間にこのような微妙な部分があることはご理解いただけたと思う。

では、受験生としてはどうすれば良いか

無論、相対性理論を学ぶのではない。

結論としては、電磁気の分野で実験室系とは異なる慣性系を勝手に取らないということが大事だ(誘導がない限り)。

運動方程式

\vec{F}=m\vec{a}

は実験室系でのみ成り立つと考えた方がよい。

 

今まで述べてきた問題だけでなく、実は視点を異なる慣性系にうつすと電場や磁場も変換されてしまうという問題もある

 

力学ではいろいろな系からみれるようにしておくことが鉄則だったが、電磁気ではそういうことをやってはならないのだ