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仕事の3つの定義【仕事率から定義する方法】【力学】

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みなさん、仕事の定義を言えますか?

...

いえ、「お仕事」の定義ではなく、物理学における、仕事の定義です笑

 

それはともかく、まず第一のポイントとして、仕事とは、力が物体に対してある一定時間(基本的に、時刻ではない)にするものです

力が主語なんですね 物体ではないです

例えば、重力、弾性力、垂直抗力、摩擦力などなどです

その前提で、以下の三つの定義を抑えておきましょう

高校の教科書流の定義

まず、高校物理の教科書流の定義は次のようになります

物体に一定の力Fを加え、力の向きに物体がxだけまっすぐすすんだとき、その力がした仕事はW=Fxである

この定義は、当然不十分です

力の向きが物体の進む向きと同じであるという制約があり、しかも力が一定であるという制約があるからです 

 

普通の定義

本来の定義は以下のようなものです

\vec{F(t)}が物体に加わっている

微小時間t→t+dtにおいて物体の位置が

\vec{x(t)}→\vec{x(t+dt)}=\vec{x(t)}+d\vec{x(t)}

と変化したとき、この微小時間に力がした微小仕事の定義は

dW=\vec{F(t)}・d\vec{x(t)}

ところが、これは高校数学の書き方ではありません

微小変化の一次近似を理解していればわかりますし、理解しておくべきなのですが、もう一つ問題があります。

微小でない仕事は、これを積分しなければなりませんので

W=\int{dW}=\int\vec{F}・d\vec{x}

右辺はなんでしょう?これは線積分といって、完全に高校範囲を逸脱してしまいます

 

仕事率から先に定義する方法

そこで、もう一つの定義方法を紹介します

これは高校数学に収まる方法です

まず仕事率を先に定義してから仕事を定義します

\vec{F(t)}がする仕事率とは、物体の速度\vec{v(t)}を用いて

P(t)=\vec{F(t)}・\vec{v(t)}

と定義され、時間t_0→t_1に力がする仕事Wは

W=\int_{t_0}^{t_1}P(t)dt=\int_{t_0}^{t_1}\vec{F(t)}・\vec{v(t)}dt

と定義される

これなら、完全に高校数学の範囲内ですね

力が今までしてきた仕事をW(t)としましょう

すると、\frac{dW(t)}{dt}=P(t)

となることは定義の両辺を微分すればわかります

故に

dW(t)=P(t)dt=\vec{F(t)}・\vec{v(t)}dt

ですが、

\vec{v(t)}=\frac{d\vec{x(t)}}{dt}

\vec{v(t)}dt=d\vec{x(t)}

を代入して

dW(t)=P(t)dt=\vec{F(t)}・\vec{v(t)}dt=\vec{F(t)}・d\vec{x(t)}

となり、本当の定義と一致します。

dtとかdxを分数みたいに扱っていいのか?については一次近似の記事を参照してください

これが、教科書の定義の場合を含んでいることを示しましょう

教科書の場合は直線運動なので、位置ベクトル,速度ベクトルも力のベクトルもx成分のみ持つとすれば良いです

すると内積もただの積になります

すると、 置換積分の公式より、力がx座標によって定まる場合

W=\int_{t_0}^{t_1}F(x)x'(x)dt=\int_{x(t_0)}^{x(t_1)}F(x)dx...①

F(x)が特に一定Fの時、

W=F\int_{x(t_0)}^{x(t_1)}Fdx=Fx

*1

となり、確かに教科書の定義と一致します

教科書の定義より一般的な①の形も覚えておきましょう

まとめ

  • 仕事の定義は教科書流普通の定義仕事率から定義する方法の3つあり、普通の定義が本来の定義だが、微小でない仕事を求めるためには線積分が必要
  • 仕事率から定義すると、一応高校数学の範囲内におさまる
  • 全部の定義を理解しておくことが必要

 

*1:Fとxは向き付きなので、向きが逆の時は負になる