ファラデーの電磁誘導の法則と仮想的な起電力とキルヒホッフの第二法則【電磁気】
電位差を導入してキルヒホッフの第二法則をよく知られた形に直した後、が二種類に分類できることを確認し、その一方が仮想的な電位差であることを確認します。
磁束の変化による電位差とキルヒホッフの第二法則
回路の一般論の記事で、キルヒホッフの第二法則を
と紹介しました。
ところが、実際は
...①
という磁束の変化による電位差を導入して
というのがキルヒホッフの第二法則とされます。
起電力は電位差を生み出すことは以前の記事で導出しました。このことから、電位差は「誘導起電力」と呼ばれ、起電力として扱われます。
そして、①はファラデーの電磁誘導の法則などと呼ばれます。
このに は、導線(導体棒)の運動による起電力と、磁場の時間変化が作るループ電場による仮想的な「電位差」の二種類が同時に含まれているので注意してください。いまから、順番にそれぞれの例を見ていきます。
例1 導線の運動による電位差
例えば、導体棒が一定の磁場中を運動している場合を考えましょう
すると、電子が棒と並行な方向に力を受けることで、「仕事」をされます
この時の「仕事率」は、
を導体棒で積分したものになります
通常の起電力の場合と同様に、この「仕事率」を打ち消す電場が瞬時に形成され、電位差
が生まれます
一様な磁場中で速度が磁場に直行する場合は、これを積分することでよく知られた公式
が得られます
これは
で得られる電位差と一致します(、ただし向きに注意)
この場合、実際に導体棒内に電場と電位差が生じています
例2 磁場の変化が作るループ電場による仮想的な「電位差」
上図のような抵抗Rしか回路素子がない回路の磁束が増加する場合を考えます
この時下図のような仮想的な起電力を考えます
このようにすれば電流をオームの法則から知ることができます
では実際に電位差が生じているのでしょうか?
そうではありません
実際には以下のようになっています
電位差は抵抗にしか生じていないのです
だからこの場合はは仮想的な電位差*1なのです
の式に戻って説明します
と変形すると、左辺が本当の電位差で、その電位差を一周すると右辺の
になるという意味なのです
つまり、本当の電位差を一周させると0にならないのです
このことが、例1の場合と異なる点です
そして、これがループ電場とか渦電場とかいう意味です
つまり、電場を導線一周で積分してもゼロにならないということです
この場合、確かに左回りで積分すると負の値になって0にならないことがわかります。
この現象は、何もない空間で磁場が変化したときに生じるループ電場が原理となっています
上述の回路の場合は、このループの内、抵抗内の電場だけがのこり、導線部分は消え去ります。仮定2により電荷分布が瞬時に変化するからです。それでも、磁束の増加が同じならば電場を一周積分すると同じだけの値になります。
まとめ
キルヒホッフの第二法則は、磁束の変化を電位差
とみなして(誘導起電力)
と書ける
誘導起電力には二種類あって、片方は電場を伴う実際の電位差、もう片方は仮想的な電位差である
*1:高校範囲を超える話だが、マクスウェルはこの仮想的な電位差をも含めたスカラーポテンシャルを導入した。これとベクトルポテンシャルというベクトル場のポテンシャルを合わせて電磁ポテンシャルという。