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万有引力の位置エネルギーの導出【重力】【力学】

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要約と目次

万有引力位置エネルギーの公式

U=-G\frac{mM}{r}

を導出します

また、地上での位置エネルギーの公式

U=mgh

との関係も解説します

万有引力位置エネルギーの導出

万有引力位置エネルギーの公式

太陽の質量が惑星より十分大きいため、太陽が惑星から受ける万有引力の影響が無視でき、太陽が静止していると近似できる場合を考える。太陽の位置を原点にとり、太陽、惑星の質量をそれぞれM,mとおくと、太陽から惑星が受ける万有引力保存力であり、その位置エネルギー

U=-G\frac{mM}{r}

と表せる*1。ただし、rは原点からの距離である。

証明

惑星の位置Xが任意の微小ベクトル\vec{dx}だけ変位し、原点からの距離rがr+drに微小に変化したとする。もちろん、\vec{dx}に、原点から惑星への方向ベクトルと垂直の成分が含まれていても構わない。

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惑星の微小変位

この間の万有引力\vec{F}の微小な仕事をdWとする。仕事の定義より、

dW=\vec{F}・\vec{dx}

だが、万有引力\vec{F}はかならず原点から惑星への方向ベクトルの逆を向いているので、これとの内積は、\vec{dx}のその方向成分のみを見れば良い

ゆえに万有引力の法則

F=G\frac{mM}{r^2}

と力の向きがrの減少する方向を向いていることから、

dW=\vec{F}・\vec{dx}=-G\frac{mM}{r^2}dr...①

一方、惑星の

U=-G\frac{mM}{r}

の「位置エネルギー」(であることを今証明しようとしている関数)の値も、微小なだけ変化する。この値は

dU=(-G\frac{mM}{r+dr})-(-G\frac{mM}{r})=G\frac{mM}{r^2}dr...②

であるから、①、②より、

dW+dU=0

dW=-dU

つまり、これを積分することで、微小でない惑星の移動においても、

万有引力の仕事=-Uの変化

となる。つまり、任意の点Aから点Bへ惑星が動くと、そのときの万有引力の仕事Wは

W=\int_{A}^{B}dW=-\int_{A}^{B}dU=U(A)-U(B)

になるので、Uは確かに位置エネルギーである

この式から直ちにこの場合の万有引力保存力であることもわかる

 

地上での重力の位置エネルギーとの関係

太陽を中心に考えた時と同様に、地球Mを中心にした場合を考えましょう。質量Mの地球を静止していると近似すると、地上の質量mの物体に対しても全く同じ位置エネルギーの式

U=-G\frac{mM}{r}

が成立するはずです。

ですが、地上で重力を考える時、位置エネルギーの公式はU=mgh

ですよね。これはどういうこと?

 

実は、ここで近似をしているのです。

日常的な物体の運動を考えてみてください。地球の半径に比べると、物体の動く距離はほんのわずかであることがわかります。ゆえに地表の地球中心からの距離をr_0とすると、rはr_0に対して非常に少ししか変化しません。

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地球。Δrは実際はもっと小さいが、みやすくするために大きくかいた。

よって、

r=r_0+Δr

とすると、Δrが微小であり、以下の近似が成立します。

U=-G\frac{mM}{r}=-G\frac{mM}{r_0}+G\frac{mM}{r_0^2}Δr

Δrは地上からの高さhに相当するので、重力加速度g

g=G\frac{M}{r_0^2}

を用いると

U=-G\frac{mM}{r_0}+mgh

となります

第一項は定数なので、位置エネルギーの基準点をずらすと確かにU=mgh

となります。

まとめ

太陽Mが静止しているという近似において、惑星mに働く万有引力は保存力であり位置エネルギー

U=-G\frac{mM}{r}

と書ける

一方、地球Mを静止していると近似して地上の物体mに対しても同じ位置エネルギーの式

U=-G\frac{mM}{r}

が成立するが、地上付近ではrと地上の地球中心からの距離r_0のずれΔrが微小であり、高さhを意味するので、

U=mgh

とかける

太陽も動く場合の位置エネルギー

こちらの記事参照

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