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インダクタンスの定義とは?【コイル】【自己インダクタンス】【相互インダクタンス】【磁束】【電磁気】

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インダクタンスとは何かということを解説します。それとファラデーの電磁誘導の法則を組み合わせて、他のコイルの電流を含めた電流と誘導起電力の関係を調べます。

インダクタンスの定義

コイル(的なもの)がn個存在し、静止している場合を考える。これらを番号j=1,2,...nで表す

それぞれのコイルの磁束、電流、電圧の正の向きを以下の図のようにする

f:id:vasewell:20210221154507p:plain

磁束を増やす向きに電流が流れる方向に進んだ時の電位差を測る

そして、コイルjの全磁束*1Φ_j(t),電流をI_j(t),V_j(t)とする

このとき、適切な条件が成り立っているとするならば*2、コイルjの全磁束を

Φ_j=\displaystyle \sum_{k=1}^{n}L_{jk}I_k

という形でそれぞれのコイルの線形結合で表せる。このときの係数L_{jk}をインダクタンスといい、コイル達の相対的な位置関係で定まる。

特に、L_{jj}をコイルjの自己インダクタンスという

また、相反定理L_{jk}=L_{kj}がなりたち、M_{jk}=|L_{jk}|=|L_{kj}|をjとkの相互インダクタンスという

定義ですが、証明が必要な箇所があります

  • Φ_j=\displaystyle \sum_{k=1}^{n}L_{jk}I_k
  • 相反定理L_{jk}=L_{kj}

です

ですが、一般的な証明は高校数学範囲を超えるので、これらは原理のように覚えておくのが良いです。

 

ファラデーの電磁誘導の法則

さらに、以下のファラデーの電磁誘導の法則が成り立ちます

V_j(t)=-\frac{dΦ_j(t)}{dt}

この電位差は、キルヒホッフの第二法則のV_Φのうちループ電場に起因する仮想電位差と同じ原理です。ですので、コイルを単なる導線とみなすと、本当は

-\frac{dΦ_j(t)}{dt}

キルヒホッフの第二法則の第二項

-\frac{dΦ}{dt}

の一部でしかないのですが、普通そうはみなさず、独立した電位差としてみなします。

つまり実際に電場はコイルの導線内部に生じていないのです。

だから、これも厳密には仮想的な電位差の一種なのですが、他のものと同様の電位差として扱います。

インダクタンスと誘導起電力

以上の二つを用いて、全磁束をインダクタンスと電流で書くと、複数のコイルが近くにある系の電位差(逆起電力)は、以下のようにして書けることがわかります。

V_j(t)=-\frac{d}{dt} \displaystyle \sum_{k=1}^{n}L_{jk}I_k=-\displaystyle \sum_{k=1}^{n}L_{jk}\frac{dI_k}{dt}

いま、コイルが静止している場合を考えているのでインダクタンスは時間に寄りません。

ここで、-L_{jj}\frac{dI_j}{dt}という自己インダクタンスによる項による逆起電力の現象を自己誘導、そうでない項のそれを相互誘導といいます

特に、二つのコイルが存在する場合

V_1(t)=-L_{11}\frac{dI_1}{dt}-L_{12}\frac{dI_2}{dt}

V_2(t)=-L_{21}\frac{dI_1}{dt}-L_{22}\frac{dI_2}{dt}

注意として、L_{12}が正であるか負であるかは位置関係を見て判断します。相互インダクタンスは普通正と決まっているので、それがそのままL_{12}と等しいかはわかりません。

まとめ

インダクタンスとは、磁束が電流に比例する重ね合わせの近似の元で、近くにあるコイル同士が磁場によって相互作用する様子を表すための比例係数である。これとファラデーの電磁誘導の法則を組み合わせることで、誘導起電力が自他の電流の時間変化から生み出される式を表現することができる。

 

*1:コイルの底面をつらぬく磁束の巻き数倍であることに注意

*2:電場の時間微分が無視でき、コイルの長さが十分長いなど