位置エネルギーとは?保存力とは?力学的エネルギー保存則の導出も!【力学】
要約と目次
この記事は、保存力とは何かを説明したのち位置エネルギーを定義し力学的エネルギー保存則を証明します
保存力の定義
保存力を二つの条件で定義しましょう
- ある物体Xが受けるある種類の力が、その物体の位置pの関数で表せる
- その物体がある点Aから別の点Bへ移動した時、その間に、その力によってその物体Xがされる仕事が、点Aと点Bの位置のみによって決まり、AからBへ向かう経路とか時間にはよらない(始点と終点だけで決まる)
以上の二つの条件を満たすような力を保存力といいます
位置エネルギーとは?
位置エネルギーの定義
位置エネルギーとは、保存力の性質を利用した概念です
具体的に定義してみましょう
考えている時間内において、物体Xが保存力を受けて運動しているとしましょう
この場合、以下の性質を満たす場所pの関数が存在します
任意の点Aから任意の点Bへ物体Xが動くとき、保存力のする仕事がである
このようなを位置エネルギーといいます
位置エネルギーの存在証明
え?そんな場所の関数が本当に存在するのか?
では、存在することの証明をしてみましょう
φをとりあえず定義して、それが位置エネルギーの定義と合致していることを示すことで、位置エネルギーの存在を証明します
とりあえずφを定義してみる
まず、なんでもいいので点Cをとってきて、と決めます
(なんでもいい理由は、後で説明するのですが、位置エネルギーは基準点が任意で、一通りに定まらないことと関係しています)
そして、点C以外の任意の点pにおける値は、点Cから点pまで物体Xを動かしたときの保存力のする仕事Wの-1倍と定義します
φが本当に位置エネルギーになっているか?
これが本当に位置エネルギーの定義を満たすことを示しましょう
任意の点Aから任意の点Bへ物体Xを動かす場合の仕事を考えます
保存力の定義から、経路や動かす速さはどうとっても同じなので、点A→点C→点Bという経路をとり、速さ1で動かす場合を考えます
すると、点A→点Cの経路でされる仕事は、それを速さ1で逆に辿った点C→点Aの経路でされる仕事の-1倍であることがわかります
なぜなら、同じ点における仕事率は、速度ベクトルが逆ベクトルかつ力のベクトルが同じであることから、-1倍されるからです
このこととφの決め方から、
点A→点Cの経路でされる仕事
=それを速さ1で逆に辿った点C→点Aの経路でされる仕事の-1倍
=の-1倍
=
となります
一方、φの決め方より、
点C→点Bの経路でされる仕事=
なので
点A→点Bの経路でされる仕事
=点A→点C→点Bという経路でされる仕事
=点A→点Cの経路でされる仕事+点C→点Bの経路でされる仕事
=
となり、確かに位置エネルギーの条件を満たしています
位置エネルギーの不定性
このことは、位置エネルギーの定義を見ればすぐにわかります
位置エネルギーの定義では、φの異なる二点における差しか問題にしていないので、全ての値に+fしても同じく条件が満たされるからです
力学的エネルギー保存則とその証明
力学的エネルギー保存則とは?
いよいよ、よく使われる、あの「力学的エネルギー保存の法則」を、いままで定義してきた内容を用いて、以下のように定式化できます
物体Xが保存力のみを受けて運動しているとする。位置pの関数が、その保存力の位置エネルギーであるとする。物体Xの時刻tにおける位置をp(t)と表すと、物体Xの運動エネルギーK(t)と位置エネルギーの和は時間によらず一定である
:、Eは全エネルギーで時間によらない定数
「運動エネルギーと仕事の関係」とは別の概念なので注意しましょう
力学的エネルギー保存則の証明
任意の二つの時刻でEが等しければ良い
その二時刻の最初の方の時刻をt'、後の方の時刻をt''とする
すると、t’からt''の間の時間で保存力がした仕事Wは、位置エネルギーで
一方、運動エネルギーと仕事の関係から
故に、
となる。よってE(t)は実際には時間によらない定数である。
力学的エネルギー保存則の限界
力学的エネルギー保存則は、保存力の場合のみ成立する概念であり、いかなる場合でも使える法則ではないことに注意しましょう。
エネルギーはもっと多様な形態があり、エネルギー保存則は力学の範囲内では完結しないのです。だからこそ、「力学的」という言葉がつくのであります。
まとめ
保存力という、仕事が始点と終点のみに依存する力の場合は、位置エネルギーが定義でき、位置エネルギーと運動エネルギーの和が保存するという力学的エネルギー保存則が成立する。