波の定義とは?波動とはなんなのか?【ホイヘンスの原理】
要約と目次
波、あるいは波動とはなんなのか、その定義を確認し、例をとりあげます
波・波動の定義
結論からいうと、最も一般的には次のようになります
波、あるいは波動とは、場所ごとになんらかの時間変化する値が割り当てられており、隣接する場所のその値が影響し合うことによって、その値の変動が遠くの場所まで伝わっていく現象のことである
波とは、この通り、非常に抽象的な概念です。であるが故に、いろいろな現象に適用できる普遍的な概念でもあります。
わかりにくいので、もう少し具体的に説明しましょう
上の図のように場所(点)A、B、C、D、E、Fが並んでいるとします。
それぞれに値φが割り当てられていて、そのφは時間変化するとしましょう
そして、φは近くの値に影響されて変化するとします
いま、Aのφ、つまりφ(A)が増加したとします
するとどんな現象が起きるでしょうか?
まず、Aの隣のBが影響されて、φ(B)も増加します
さらに、φ(C)がそれに影響されて増加し、以降φ(D)、φ(E)、φ(F)と順番に増加されていきます
このようにして、φ(A)の変化が時間をかけて空間を伝わっていき、最終的に遠くの点Fに到達するという現象が発生します。これこそが「波動」であります。
例
以上のような抽象的な定義はなかなかわかりにくいので、具体例を挙げて説明します
最もわかりやすい例は、水の波(水面波)です
例えばプールで誰かが飛び込むと、その波が周囲に伝わっていきます
なぜ伝わるかということを分析すると、それは水の動きが周りの水を動かし、さらにその動きがもっと遠くの水を動かす、という連鎖反応を引き起こしているからです
だからこそ、壁などによってその連鎖反応を断ち切ってしまうと、波の進行も止まるわけです
さっきの抽象的な説明との対応を確認しておくと、「場所ごとの値φ」は、「水面の高さ」です
水の波のような誰でも知っている現象を難しく考えすぎ、大袈裟に考えすぎだと思いますか?
しかし、このような分析が抽象的な思考の手がかりをつくります
波の現象は水面にだけあらわれるものではありません
例えば、音や光も波の一種だということがわかっています
音は、空気の振動が空間を伝わっていく現象として理解されています
空気の振動が、周囲の空気を振動させ、その振動がさらに遠くの空気を振動させ、、、
という連鎖反応が音の正体なのです
だから私たちは離れた人に自分の声を伝えることができるのですね
ここでいう「場所ごとの値φ」は、「空気分子の位置の変位」です
光も、電場と磁場が伝わっていく波の現象であることが知られています。マクスウェル方程式によって、近くの場所同士の電磁場の影響が表現されます。
ここでいう「場所ごとの値φ」は、「電場や磁場の値」です
ロープを振るとその振動が伝わるのも、波の一種であることがわかると思います。ロープの一部分が振動すると、その周りの部分も振動するので、その連鎖反応によって振動が遠くまで伝わるからです。
ここでいう「場所ごとの値φ」は、「ロープの位置の変位」ですね
抽象的な思考を働かせることにより、物理学の範囲を逸脱した現象も波動という概念によって理解することができます。
具体的には、「うわさ話」です
うわさ話は、人びとの間を伝わっていきます
うわさ話は波動として捉えることが可能です
そのメカニズムは
うわさ話を聞いた人が、周囲の人にうわさ話を広めて、その周囲の人がまたうわさ話を周囲の人に広めて、さらにそれを聞いた人が...という連鎖反応
だからです
これは、人を場所に見立てれば、波動の現象に他なりません
したがって、うわさ話も広い意味での波動現象ということができるでしょう
ホイヘンスの原理
この波動の意味をより明確化したのが、ホイヘンスの原理です
ホイヘンスの原理は、波が伝わった点が、新たな波源となって次の波をつくるという連鎖によって波の現象を説明します
これはある意味で波の定義そのものと言えるでしょう