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起電力の意味、本当にわかってますか?【起電力≠電位差】【電磁気】

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 起電力とは何かについて解説します。

 起電力Vがあるとき電圧が生じるということは事実ですが、これは誤解しやすいポイントです。これは本当は起電力の定義ではないのです。むしろ定理です。

起電力の定義

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起電力Vとは図のような向きで電流Iが流れている時、電子に対して仕事率*1P_V=VIを与える装置である

 

また、言い換えると、右から左へ電荷Qが通ったとき、起電力がする仕事がW_V=QVである、とも言える

(dW_V=P_Vdt=VIdt=VdQだから)

つまり、起電力とは通った電荷量に比例した仕事をする装置であり、その比例定数が起電力の値Vであると定義できる(逆向きでは仕事の符号も逆になる)

起電力の電位差

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起電力Vの電位差は図の矢印の向きに測るとVである

証明

説明の都合上、生じる電位差をV'とおき、V=V'を示す。

仮定2(電子が受ける仕事率が0であること)より、起電力から受けた仕事率VIを打ち消すような電場が生じる。

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 この打ち消し電場の電子にする仕事率は-VIとなる。つまり微小時間dtで微小仕事-VIdtが電子に与えられる。

 一方、この間、電流の定義より、電子という負の電荷が左から右へ-Idt流れることになるので、電流が受ける仕事は、-V'Idtである。

このことから-VIdt=-V'IdtつまりV'=Vを得る。

 

打ち消し電場はなぜ生じるか?

打ち消し電場が生じることは仮定2という形で前提としました。この場合具体的にどのようにして生じるのでしょうか?

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簡単のため、電子ではなく正の電荷が右から左へ流れているとしましょう。

すると起電力によって電荷は加速されます。

したがって正の電荷が左側に偏ることになります。

この偏りが電場を生じさせるのです。

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回路の理論では、起電力が生じると瞬時にこの分布ができると仮定します

まとめ

起電力とは通った電荷量に比例した仕事を電子にする装置である

電位差は起電力の打ち消し電場が生じた結果として生じるものである。

 

*1:導線が静止していた場合。導線が運動している場合は導線方向の加速を考える