大学入試徹底攻略

東大生が幅広く高校物理、高校数学の解説をします

メニューページへ

一次元運動と力学的エネルギー保存則【安定釣り合い、不安定釣り合い】【力学】

←力学のメニュー

一次元運動の場合、力学的エネルギー保存則と運動方程式の関係を確認し、位置エネルギーだけを考えることで運動の全体を理解できるということを確認します。

1次元運動の力学的エネルギー保存則

3次元の場合の力学的エネルギー保存則は、1次元の場合も定義することができます。

自由度が1つだけの、1次元運動について、位置エネルギーU(x)が定義できる保存力について考えており、力学的エネルギー保存則が成立する場合を考える。

物体の運動エネルギーをK(t)、位置をx(t)とすると、力学的エネルギー保存則は、

K(t)+U(x(t))=E(時間によらず、一定)

運動方程式との関係

力は位置エネルギー微分の-1倍である。すなわち、

F(t)=-\frac{dU(x)}{dx}

【証明】

力学的エネルギー保存則は、

K(t)+U(x(t))=E

K(t)=\frac{1}{2}mv(t)^2

つまり

\frac{1}{2}mv(t)^2+U(x(t))=E

両辺をtで微分すると、

mv(t)\frac{dv(t)}{dt}+\frac{dU(x)}{dx}\frac{dx(t)}{dt}=0

mv(t)\frac{dv(t)}{dt}+\frac{dU(x)}{dx}v(t)=0

これがどんなv(t)の時も成り立っていなければならないので、v(t)で両辺を割った

m\frac{dv(t)}{dt}+\frac{dU(x)}{dx}=0

も成り立っていなければならない。

この第一項は運動方程式より、

F(x(t))=m\frac{dv(t)}{dt}

ただし力は保存力なので、位置xの関数F(x)である。従って、

F(x)+\frac{dU(x)}{dx}=0

F(x)=-\frac{dU(x)}{dx}

 

位置エネルギーから力を導けることになるので、位置エネルギーの関数U(x)から運動の全てが把握できることがわかります。

安定釣り合いと不安定釣り合い

力がF(x_0)=0となるような点x_0を釣り合いの点という。

釣り合いの点の分類

  • F'(x_0)\gt 0:不安定釣り合い
  • F'(0)=0 :微妙
  • F'(x_0)\lt 0:安定釣り合い

これは位置エネルギーの関数で書くとU'(x_0)=0であり、分類は

  • U''(x_0)\lt 0:不安定釣り合い(Uの極大値)
  • U''(x_0)=0 :微妙
  • U''(x_0)\gt 0:安定釣り合い(Uの極小値)

これは図で書くとよくわかります。

Uの極小値の点は、位置エネルギーが窪んでいて谷底のようになっている。だから安定しています。

Uの極大値の点は、位置エネルギーの山のてっぺんの点なので、位置が少しずれると山の麓まで転がり落ちてしまうでしょう。だから不安定な点と言える。

極小の点では、少し位置がずれても再び元の釣り合いに戻ろうとする力が働き、安定

極大の点では山の頂上にいるようなもので、少し位置がずれるだけでますます釣り合いの点から遠ざかり、不安定


安定釣り合いの点における微小振動は単振動

安定釣り合いの点x_0から少しだけ離れた位置で振動する物体は単振動している。

【証明】

x_0から微小だけ離れたx=x_0+dxの位置においては、力は、微分による一次近似より、

F(x_0+dx)=F(x_0)+F'(x_0)dx=F'(x_0)dx

と書ける。ここでx_0は釣り合いの点なのでF(x_0)=0であることに注意する。

安定釣り合いでは、F'(x_0)\lt 0なのでk\equiv-F'(x_0)と定義すると、kは正の定数であり、

F(x_0+dx)=-kdx

この力の形は、x_0を中心とし、バネ定数kのフックの法則と同じである。

故に単振動をすると近似的にみなすことができる。