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理想気体の内部エネルギーを全て取り出す方法【熱力学】【エネルギー】

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理想気体の内部エネルギーがnc_VTで表せることが実感できる例題です。

問題設定

理想気体が入った容器。右の壁は可動式となっている。壁は断熱壁。周囲は真空。

上の図のような状況を考える。物質量nの温度Tの理想気体が容器に入っている。周囲は真空であり、右の壁は可動壁になっていて、滑らかに動く。壁は断熱壁となっている。

可動壁は気体の圧力を受けて右側に移動する。ここで、可動壁は無限に右側に移動できるものとする。

この状況で、可動壁が無限に右側に移動する間、可動壁は気体からどれほどのエネルギーを受け取るか?

解答

可動壁の移動距離をxとする。可動壁の面積をSとすると、可動壁が微小距離dx動く時の圧力がした仕事

Fdx=pSdx

ゆえに求めるエネルギー(仕事)Wは

W=\int_0^{\infty}Fdx=\int_0^{\infty}pSdx=\int_{V_0}^{\infty}pdV...①

ここで体積Vが

dV=Sdx

であることを用いた。ただし、V_0は初期状態の体積である。

 

あとはpのV依存性を調べれば良い。

気体は断熱変化しているので、ポアソンの法則が使える。

pV^{\gamma}=p_0V_0^{\gamma}

p=p_0(\frac{V_0}{V})^{\gamma}

ただしp_0は初期状態の圧力である。

 

これを①に代入すると、

W=\int_{V_0}^{\infty}p_0(\frac{V_0}{V})^{\gamma}dV=p_0V_0^{\gamma}[\frac{1}{-\gamma+1}V^{-\gamma+1}]_{V_0}^{\infty}=-p_0V_0\frac{1}{-\gamma+1}

マイヤーの関係式から-\gamma+1=-\frac{c_p}{c_V}+1=\frac{-R}{c_V}であるから、最下辺は

W=p_0V_0\frac{c_V}{R}=nc_VT

ここで理想気体の状態方程式を初期状態について用いた。

 

これは初期状態の内部エネルギーUである。

この装置によって、理想気体は無限に希薄化され、その内部エネルギーは全て仕事として取り出されることになる。