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【熱力学】PVグラフの見方

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熱力学でよく登場するグラフがPVグラフです

PVグラフはとても便利なのですが、見方を知っていないと上手く使いこなせません

そこで、理想気体の場合のPVグラフの見方についてまとめました

点が状態を表す

理想期待の状態方程式

PV=nRT

より、圧力と体積(P,V)が決定すると、温度Tも自動的に決定されます

つまり、PVグラフの点によって状態を一意的に表すことができます。

したがって、PVグラフの向きつきの曲線によって、気体の状態変化を表すこともできます。

面積=仕事

PVグラフの面積が気体がした仕事やされた仕事を表します。

具体的には、圧力Pの気体の体積が微小量dVだけ変化したとき、気体が外部にした微小な仕事は、

dW=PdV

なので、以下のように

f:id:vasewell:20210302163301p:plain

体積が増加する場合

PVグラフの面積が、気体がした仕事になります

Vが減少する時、dVが負になるのでdWが負になり、気体が仕事をされたことを意味します

微小の二次の量を無視していることに注意しましょう

微小な仕事を積分すれば、微小でない仕事も計算できます

次に曲線がループ状になっている時を考えましょう

 

右回りのループ

f:id:vasewell:20210302163322p:plain

気体が一周期でした仕事

ループの上側では体積が増加しているので、仕事をしています

ループの下側では体積が減少しているので仕事をされています

正味の仕事は、前者-後者の面積になるので、図のようにループ内の面積になります

左回りのループ

f:id:vasewell:20210302164130p:plain

左まわりのループでは、右周りと逆に、一周期で仕事をされています

ループ内の面積は気体がした仕事ではなくされた仕事であることに注意してください

注意点

「右周りの面積はした仕事で、左回りの面積ならされた仕事」というのは、体積が横軸で、圧力が縦軸の場合だけです

軸が入れ替わったらどっち周りが仕事をしているサイクルなのかというのは入れ替わります

意味を考えて理解しましょう

変化の種類と曲線の種類

各変化とグラフ上の曲線

定積変化はV軸と垂直な直線

定圧変化はP軸と垂直な直線

等温変化はPV=一定なので反比例のグラフ

断熱変化はポアソンの法則よりPV^γ=一定の曲線

になります

基本的なことですが、確認しておきましょう

接線の傾き

任意の同じ点を通る、定積変化、定圧変化、等温変化、断熱変化の曲線の、その点における接線の傾きは以下のような関係になっています

f:id:vasewell:20210302172319p:plain

PVグラフの接線の傾き

これも、体積が横軸、圧力が縦軸という前提を忘れないでください

ポイントは、断熱変化の方が傾きがシャープだということです

等温変化と断熱変化の傾きは負であり、断熱変化の傾き<等温変化の傾きです

証明

\frac{dP}{dV}を比較すれば良い

状態方程式の一次近似の式

\frac{dP}{P}+\frac{dV}{V}=\frac{dT}{T}

より、等温変化の場合

\frac{dP}{P}+\frac{dV}{V}=0

\frac{dP}{dV}=-\frac{P}{V}...①

断熱変化の場合、ポアソンの法則より

PV^γ=(P+dP)(V+dV)^γ

1=(1+\frac{dP}{P})(1+\frac{dV}{V})^γ=(1+\frac{dP}{P})(1+γ\frac{dV}{V})=1+\frac{dP}{P}+γ\frac{dV}{V}

ただし、微小の2次以上の項を無視した

故に、

\frac{dP}{dV}=-γ\frac{P}{V}...②

γ=\frac{C_P}{C_V}={1+\frac{R}{C_V}}\gt{1}なので、①、②より確かに

0>等温変化の傾き>断熱変化の傾き

である

まとめ

PVグラフのポイントは

  • 点が状態を完全に表す
  • 面積が仕事を表す
  • 変化の種類によって接線の傾きの特徴が存在する

ということです。自分でこれらを具体的に説明できるか確かめてみましょう。