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相対運動エネルギーと重心運動エネルギーとは?【運動エネルギーを分解する】【力学】

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いくつかの物体の系を考えます

系の全運動エネルギーを重心運動エネルギーと相対運動エネルギーに分ける(①)ことができるということと、系の内力の仕事と外力の仕事がこの二つのエネルギーにどう影響するか(③、④)について説明します

公式

系の全運動エネルギーをK、重心系から見た全運動エネルギーをK_{in}(相対運動エネルギー)、重心に全質量が集まったと見て、系全体を一つの質点と見たとき(重心質点と仮に呼ぶ)の運動エネルギーをK_G(重心運動エネルギーとする。このとき

K=K_{in}+K_G...①

 ゆえにΔを時刻t_0から時刻t_1までの変化量とするとき

 ΔK=ΔK_{in}+ΔK_G...②

右辺は、時刻t_0から時刻t_1までの内力の仕事の合計W_{内}、重心系における外力の仕事W_{外in}、外力が重心質点にする仕事W_{外G}を用いて

ΔK_{in}=W_内+W_{外in}...③

ΔK_G=W_{外G}...④

図示すると以下のようになります

f:id:vasewell:20210218023513p:plain

 

証明

n個の物体の系(集合)の名前をAとし、物体の名前をj=1,2,3,...nとする

それぞれの質量をm_j

jの位置ベクトルを\vec{x_j} 速度ベクトルを\vec{v_j}、重心系からみた速度ベクトルを\vec{v_{j-in}} 運動エネルギーをK_j、重心系から見た運動エネルギーをK_{j-in}とし、

重心の位置ベクトルを\vec{x_G} 速度ベクトルを\vec{v_G}

合計質量をMとする

また、それぞれのベクトルの大きさは矢印を付けずに表すものとする

まず①を示す

K\\=\displaystyle \sum_{j∈A}K_j\\=\displaystyle \sum_{j∈A}\frac{1}{2}m_jv_j^2\\=\displaystyle \sum_{j∈A}\frac{1}{2}m_j|\vec{v_G}+(\vec{v_j}-\vec{v_G})|^2\\=\displaystyle \sum_{j∈A}\frac{1}{2}m_j(v_G^2+|\vec{v_j}-\vec{v_G}|^2+2\vec{v_G}・(\vec{v_j}-\vec{v_G}))\\=\displaystyle \sum_{j∈A}\frac{1}{2}m_jv_G^2+\displaystyle \sum_{j∈A}\frac{1}{2}m_jv_{j-in}^2+ \displaystyle \sum_{j∈A}m_j\vec{v_G}・\vec{v_{j-in}}\\=\frac{1}{2}Mv_G^2+\displaystyle \sum_{j∈A}K_{j-in}+ \vec{v_G}・\displaystyle \sum_{j∈A}m_j\vec{v_{j-in}}\\=K_G+K_{in}+ \vec{v_G}・\vec{P_G}\\

最後の辺の第三項の\vec{P_G}重心系から見た全運動量であるが、それは常に0なので、結局

K=K_{in}+K_G

ゆえに

 ΔK=ΔK_{in}+ΔK_G

でもある

次に③、④を示す

物体jに働く外力を\vec{F_{j-外}}、全外力の和を\vec{F_{外}}、物体jからkに働く内力を\vec{F_{jk}}とおく

まず④は、重心運動方程式

\vec{F_{外}}=M\frac{d\vec{v_G}}{dt}

に基づき重心を一つの質点(重心質点)としてみることができ、そのエネルギーと仕事の関係より

ΔK_G=W_{外G}

である

次に③を示す

まず、重心系における内力の仕事の合計をW_{内in}、重心の加速による重心系での慣性力のする仕事をW_{慣in}とすると、重心系におけるエネルギーと仕事の関係から

ΔK_{in}=W_{内in}+W_{外in}+W_{慣in}

だが、内力の仕事の合計は座標系の速度によらないので、W_内は重心系における内力の仕事の合計W_{内in}と等しい ゆえに

ΔK_{in}=W_内+W_{外in}+W_{慣in}

である

あとは、

W_{慣in}

がゼロであることを示せば良い

物体jがうける慣性力は、重心の加速度を用いて

\vec{F_{慣j}}=-m_j\vec{a_重}

だから、仕事率を積分して、

W_{慣in}=\displaystyle\sum_{j∈A}\int_{t_0}^{t_1}\vec{F_{慣j}}・v_{j-in}dt=-\int_{t_0}^{t_1}\vec{a_重}・\displaystyle\sum_{j∈A}m_jv_{j-in}dt

\displaystyle\sum_{j∈A}m_jv_{j-in}は重心系の運動量の和なので0である。ゆえに

W_{慣in}=0

ゆえに

ΔK_{in}=W_内+W_{外in}

 

 

ちなみに、二体問題の場合は

K_in=\frac{1}{2}μv_r^2

となります

参考記事↓

vasewell.hatenablog.com